傷病手当金と失業手当は同時にもらえる?受給の順番と切り替え方
結論から言うと、同時には受け取れません。理由は金額の調整ではなく、そもそも2つの制度が求めている状態が正反対だからです。 では順番に受け取るにはどうすればよいのか。ここで手続きをひとつ忘れると、失業手当そのものが受け取れなくなります。
この記事の内容
同時に受け取れないのはなぜか
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やケガの療養のために働くことができず、 給与の支払いを受けられない期間の生活を支えるための給付です。つまり働けない状態であることが前提になります。
一方、雇用保険の基本手当(失業手当)は、就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず 職業に就けない方への給付です。つまり働ける状態であることが前提です。 ハローワークも、病気やけがのためにすぐには就職できないときは基本手当を受けられないと明示しています。
2つの制度が求める状態は真逆であり、同じ期間について両方の要件を同時に満たすことは理屈のうえでもあり得ません。 実務上も、退職後の傷病手当金の継続給付と失業給付は同時に受け取れないと案内されています。
| 傷病手当金 | 失業手当(基本手当) | |
|---|---|---|
| 制度 | 健康保険 | 雇用保険 |
| 前提となる状態 | 療養のため働けない | 働けるが職に就けない |
| 窓口 | 健康保険組合・協会けんぽ | ハローワーク |
| 期間の上限 | 支給開始日から通算1年6か月 | 所定給付日数(90〜360日) |
基本形は「療養が先、求職が後」
体調を崩して退職した方が取る流れは、多くの場合次のような順番になります。
- 在職中に療養のため休職し、要件を満たせば傷病手当金を受給する
- 退職後も要件を満たす場合は、傷病手当金の支給を継続して受ける(継続給付)
- 働けない状態が続く間は、失業手当の受給期間の延長を申請しておく
- 働ける状態まで回復したら、ハローワークで求職の申込みをして失業手当の手続きに移る
ポイントは、3番を飛ばさないことです。ここを飛ばすと、回復したときには失業手当を受け取る権利が 期限切れになっていた、ということが起こり得ます。詳しくは後述します。
なお、傷病手当金を受け取れる条件は次の4つとされています。 業務外の病気やケガの療養のための休業であること、療養のため仕事に就くことができないこと、 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間について給与の支払いがないことです。 最初の連続3日間は「待期」と呼ばれ、この3日間は支給の対象になりません。 申請書の入手方法・誰が何を記入するか・提出先は「傷病手当金の申請書の書き方」で解説しています。
退職後も傷病手当金を受け続けられる条件
退職して健康保険の被保険者資格を失っても、条件を満たせば傷病手当金を引き続き受け取れます。これを継続給付といいます。 示されている主な条件は次のとおりです。
- 資格を喪失した日の前日(退職日)まで、継続して1年以上の被保険者期間があること(任意継続被保険者であった期間などは除かれます)
- 退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること
- 退職後も引き続き同一の傷病により働けない状態であること
なお、失業給付(基本手当)を受け取ることは「働ける状態」になったことを意味するため、 継続給付と同時に受け取ることはできません。
見落としやすい条件
継続給付は、いったん働ける状態になって支給が終わると、その後に再び働けない状態になっても支給されません。 在職中のように「回復したので復帰、また悪化したので再開」という受け取り方はできない、という点が大きく違います。 退職日に出勤してしまうとその日は労務不能と扱われないなど、細かい条件もあるため、 退職日を決める前に加入している健康保険の窓口へ確認しておくことをおすすめします。
受給期間の延長を忘れると失業手当が消える
失業手当を受け取れる期間(受給期間)は、原則として離職した日の翌日から1年間です (所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)。 この1年を過ぎると、所定給付日数がまだ残っていても基本手当は受け取れません。
療養に半年、1年とかかった場合、回復した頃には受給期間が終わりかけている——ということが現実に起こります。 これを防ぐのが受給期間の延長です。 病気、けが、妊娠、出産、育児などの理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、 その働くことのできなかった日数だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長で3年間で、 もとの1年と合わせると最長4年間まで受給期間を確保できる計算になります。
申請は、30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日以降、早期に行うことが原則とされています。 延長後の受給期間の最後の日までであれば申請は可能とされていますが、 先延ばしにする理由はどこにもありません。療養が長引きそうだと分かった時点で、住所地を管轄するハローワークに相談してください。 本人が来所しにくい場合、代理人や郵送による申請も認められています。 延長できる理由の範囲・必要書類・申請期限の詳細は「失業手当は離職から1年で失効する|受給期間延長の条件と申請方法」で解説しています。
シミュレーション傷病手当金がいくらになるか試算する
標準報酬月額をもとに、1日あたりの金額と受け取れる期間の目安を確認できます。療養中の生活費の見通しを立てる出発点としてお使いください。
傷病手当金シミュレーションへ紛らわしい「雇用保険の傷病手当」は別の制度
ここで名前がよく似た制度を整理しておきます。雇用保険にも傷病手当という給付があり、 健康保険の傷病手当金とは別物です。「金」が付くかどうかだけの違いなので、非常に紛らわしいものです。
雇用保険の傷病手当は、離職後にハローワークで求職の申込みをしたあとに、 病気やけがのため15日以上引き続いて職業に就くことができなくなった場合に、 基本手当に代えて支給されるものです。日額は基本手当の日額と同額です。 働けない期間が14日以内であれば、基本手当がそのまま支給されます。
| 傷病手当金(健康保険) | 傷病手当(雇用保険) | |
|---|---|---|
| いつの話か | 主に在職中〜退職直後の療養期間 | 求職の申込みをしたあとの療養期間 |
| 要件 | 連続3日を含み4日以上働けない | 15日以上引き続き働けない |
| 金額 | 標準報酬月額の平均をもとに算定 | 基本手当日額と同額 |
| 窓口 | 健康保険組合・協会けんぽ | ハローワーク |
なお雇用保険の傷病手当は、同じ傷病について他の法令により行われる類似の給付を受ける日については支給されません。 健康保険の傷病手当金を受けている日と重ねて受け取ることはできない、という趣旨です。 また、30日以上引き続き働けない場合は、傷病手当を受けるか受給期間の延長を申し出るかを選ぶ形になります。 どちらが適しているかは残りの給付日数や療養の見込みによって変わるため、ハローワークの窓口で確認してください。
金額の目安
傷病手当金の1日あたりの額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、 その3分の2に相当する額として算定されます。支給される期間は、同一の傷病について 支給を開始した日から通算して1年6か月です。 途中で就労するなど支給されない期間がある場合は、その分を繰り越して受け取れます。
失業手当の1日あたりの額(基本手当日額)は、離職前6か月の賃金をもとに算定され、年齢区分ごとに上限があります。 2026年8月1日以降の上限額は、30歳未満が7,450円、30歳以上45歳未満が8,270円、45歳以上60歳未満が9,110円、 60歳以上65歳未満が7,830円です。下限額は年齢に関係なく2,562円となっています。
ここは必ず押さえてください
受け取る順番を有利にするために、症状を実際より重く伝えたり、退職の理由を事実と違う形で申告することは、 不正受給にあたります。働けるかどうかを判断するのは医師であり、給付の可否を判断するのは 保険者およびハローワークです。ご自身の状態を正確に伝えることが、結果としていちばん確実な進め方になります。
回復後に受け取れる失業手当の目安も確認しておく
年齢・雇用保険の加入期間・離職前の給与から、基本手当日額と所定給付日数の目安が出ます。療養期間のあとに何日分が残るのかを把握しておくと、計画が立てやすくなります。
失業保険シミュレーションへまとめ
- 傷病手当金と失業手当は、求めている状態が正反対のため同時には受け取れません
- 基本形は「療養が先、求職が後」。切り替えのタイミングは体調が働ける状態に戻ったときです
- 退職後の継続給付は、一度働ける状態になって支給が終わると再開できません
- 療養が長引きそうなら、受給期間の延長を早めに申請してください。原則1年の受給期間は延長で最長4年まで確保できます
- 「傷病手当金(健康保険)」と「傷病手当(雇用保険)」は別の制度です
主な参照元(一次情報)
※制度は改正されることがあります。最新の取り扱いは上記の公的情報および加入していた健康保険の窓口・管轄のハローワークでご確認ください。
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最終更新日:2026年8月9日
※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の受給可否は管轄のハローワークなど関係機関の判断によります。