失業手当をもらうと扶養から外れる?
日額3,612円の壁と「外れるのは受給中だけ」の時系列
家族の健康保険の扶養に入ったまま失業手当を受け取れるかどうかは、 基本手当日額が3,611円以下かどうかで判定されます。 3,612円以上なら扶養から外れますが、外れるのは受給が始まってから終わるまでの間だけで、 受給が終われば戻ることができます。 この記事では、3,612円という数字の出所(130万円÷360日)と、 60歳以上・19〜22歳の別基準、外れた場合の国民健康保険・国民年金の手続きまで、 日本年金機構の基準にもとづいて解説します。
この記事の内容
結論:3,611円以下なら入ったまま、3,612円以上なら「受給中だけ」外れる
健康保険の扶養(被扶養者)でいられるかどうかの収入基準は「年間収入130万円未満」ですが、 失業手当については、日本年金機構が 「雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします」と明示しています。 つまり判定に使う数字は、月収でも年収でもなく基本手当日額です。
「外れたら二度と戻れない」わけではない、という点が重要です。 扶養の収入基準でいう年間収入は過去の収入ではなく、その時点から先の見込み額で判定されます。 失業手当の受給が終われば見込み収入はなくなるので、ほかの要件を満たすかぎり扶養に戻ることができます。 なお、扶養には収入以外の要件(親族の範囲、同居の要否、国内居住など)もあります。 この記事では退職して配偶者や親の扶養に入るケースを中心に、収入基準にしぼって解説します。
「3,612円の壁」の正体 — 130万円÷360日という換算の出所
被扶養者の収入基準の大元は、厚生労働省の通知(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号)です。 年間収入が130万円未満(60歳以上の方、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害のある方は180万円未満)で、 同居なら被保険者(扶養する家族)の収入の2分の1未満、別居なら仕送り額未満であることが原則とされています。 なお同居の場合、2分の1以上でも被保険者の収入を上回らず、 被保険者がその世帯の生計維持の中心と認められるときは被扶養者となることがあります。
失業手当は日額で支給されるため、実務ではこの130万円を360日で割って日額に換算します。 130万円÷360日=3,611.11…円。ここから、 日額3,611円以下なら年間換算130万円未満に収まり、3,612円以上なら超えるという線が引かれています。 実際、3,611円×360日=129万9,960円で130万円未満に収まり、 3,612円×360日=130万320円で130万円を超えます。
さらに2025年10月1日からは、税制改正にあわせて 19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く)の基準が150万円未満に引き上げられました。 年齢によって基準は次の3本立てです。
| 区分 | 年間収入の基準 | 失業手当の日額に直すと |
|---|---|---|
| 60歳未満の方(原則) | 130万円未満 | 3,611円以下なら扶養に入れる(日本年金機構が明示) |
| 60歳以上の方・おおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害のある方 | 180万円未満 | 5,000円未満が目安(180万円÷360日) |
| 19歳以上23歳未満の方(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 (2025年10月1日以降の認定から) | 4,166円以下が目安(150万円÷360日) |
※日額の基準が公的資料に明記されているのは130万円の区分(3,611円以下)のみです。180万円・150万円の日額は同じ360日換算による目安で、最終的な判定は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が行います。19歳以上23歳未満かどうかは、認定日の属する年の12月31日時点の年齢で判定されます。
もうひとつ注意したいのは、失業手当は所得税のかからない収入ですが、扶養の判定では収入に数えるという点です。 日本年金機構の資料は、被扶養者の年間収入には雇用保険の失業等給付のほか、 公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれるとしています。 「非課税だから収入にならない」は税金の話で、健康保険の扶養では通用しません。
自分の日額はいくらか — 月給13万5,000円前後が分かれ目
3,612円の壁を越えるかどうかは、自分の基本手当日額を知らないと判断できません。 基本手当日額は、退職前6か月の賃金から計算した賃金日額(月給制ならおおよそ月給÷30)に、 給付率50〜80%(賃金が低いほど高率)を掛けて求めます。 計算のしくみは「失業手当はいくらもらえる?賃金日額と給付率50〜80%の計算方法」で解説していますが、 扶養との関係で大事なのは結論だけです。月給別に計算すると次のようになります。
| 退職前の月給 | 賃金日額(月給÷30) | 基本手当日額 | 扶養の判定 |
|---|---|---|---|
| 12万円 | 4,000円 | 3,200円 | ○ 入ったまま受給できる |
| 13万円 | 4,333円 | 3,466円 | ○ 入ったまま受給できる |
| 14万円 | 4,666円 | 3,733円 | × 受給中は外れる |
| 18万円 | 6,000円 | 4,683円 | × 受給中は外れる |
※60歳未満・月給制で欠勤がない場合の概算です(2026年8月1日改定の給付率で計算。月給14万円までは給付率80%、18万円は80〜50%の逓減帯)。月給には残業代や通勤手当も含みます(賞与は含みません)。
境目を逆算すると、基本手当日額が3,612円に達するのは賃金日額4,515円=月給換算でおよそ13万5,000円です。 退職前の月給がおよそ13万5,000円以上なら、基本手当日額は3,612円以上になり、受給中は扶養から外れると考えられます。 逆に、扶養内パートなどで月収がそれより低かった方は、入ったまま受給できる可能性があります。 ただし時給制・日給制の方には賃金日額を引き上げる最低保障の計算があり、 勤務日数が少ない方ほど上の表より日額が高くなることがあります (「パート・アルバイトでも失業手当はもらえる?週20時間の数え方と時給制だけの計算ルール」で解説しています)。
シミュレーション自分の日額が3,612円を超えるか確かめる
年齢・雇用保険の加入期間・退職理由・退職前の給与を入力すると、基本手当日額と総額の目安を計算します。2026年8月1日改定の上限額・下限額・給付率に対応しています。
失業手当シミュレーションへ扶養から外れるのはいつからいつまでか — 「入る→外れる→戻る」の時系列
日額3,612円以上の方でも、退職した日から扶養に入れないわけではありません。 日本年金機構は、待期期間中でも収入要件を満たしていれば被扶養者として認定できるとし、 基本手当(3,612円以上)の支給が始まった場合に「被扶養者(異動)届(非該当)」の届出が必要になるとしています。 つまり扶養から外れるのは支給が始まってからです。時系列で見ると次のようになります。
倒産・解雇などの会社都合で離職した方は給付制限がないため、 待期7日が明けると支給の対象期間に入り、扶養から外れるタイミングも早くなります。 受給開始までの具体的なスケジュールは 「失業手当はいつから振り込まれる?申請から受給までのスケジュール」をご確認ください。
「戻れる」ことは、手続きの書類にも表れています。 日本年金機構の被扶養者(異動)届の説明書は、収入確認の添付書類として 「退職したことにより収入要件を満たす場合=退職証明書または離職票のコピー」 「失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合=雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)のコピー」 を挙げています。受給が終わったら、支給終了の記載がある受給資格者証のコピーを添えて、 家族の勤務先経由で異動届を出せば扶養に戻る手続きができます。 被扶養者の届出は、事実の発生から5日以内に被保険者(家族)が事業主を経由して行うものとされています。
外れたら14日以内に国民健康保険と国民年金の手続きを
扶養から外れている期間は、無保険になるわけではなく、自分で公的保険に加入します。 住所地の市区町村で国民健康保険への加入(資格を失った日から14日以内)と、 20歳以上60歳未満の配偶者の場合は国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への切り替え(14日以内)の手続きを行います。 退職前後の手続き全体は「退職前にやっておくことチェックリスト」にまとめています。
気になるのは保険料の負担ですが、保険料を払っても、受給したほうが手取りで大きく残るのが通常です。 たとえば基本手当日額4,000円・所定給付日数90日なら、受け取る総額は36万円です。 一方、外れている期間(受給中の約3か月)の国民年金保険料は月17,920円(令和8年度)×3か月=約5万4,000円。 国民健康保険料は自治体と前年の所得によって異なりますが、仮に月1万円だったとしても3か月で3万円、 合計は約8万4,000円で、受け取る36万円を大きく下回ります。 しかも倒産・解雇・雇止めなどの非自発的な離職の場合は、 前年の給与所得を30/100とみなして国民健康保険料を計算する軽減制度があり、負担はさらに小さくなり得ます(市区町村に確認してください)。
「扶養から外れると損」というイメージで受給をためらう方がいますが、 比べるべきは手当の総額と、外れている数か月分の保険料です。 自分の場合の総額がいくらになるかは、失業手当シミュレーションで確認できます。
健康保険組合では基準が異なることがある
ここまでの基準は、協会けんぽ(全国健康保険協会。中小企業の多くが加入)の場合のもので、 認定の審査は日本年金機構が行います。 一方、大企業などの健康保険組合は、通知の範囲内で独自の認定基準や確認書類を定めていることがあり、 日額の扱いや給付制限期間中の認定、必要書類が協会けんぽと異なる場合があります。
確認先は次のように分かれます。 扶養に入れるか・外れるかの判定は、家族が加入している健康保険の保険者(協会けんぽまたは健康保険組合。家族の勤務先経由)、 失業手当そのものの手続きや金額は管轄のハローワークです。 「健康保険組合に聞いたら受給が終わるまで入れないと言われた」というケースも、 その組合の基準に沿った運用であれば起こり得ます。自己判断せず、まず保険者に確認してください。
よくある勘違いQ&A
給付制限の1か月の間も、扶養から外れるのですか?
協会けんぽ(日本年金機構の認定)では、外れるのは基本手当の支給が始まってからです。 待期や給付制限の期間はまだ失業手当の支給が始まっていないため、 ほかの収入(給与・年金・傷病手当金など)も含めて収入要件を満たしていれば、扶養に入ることができます。 その場合の添付書類は離職票のコピーなどです。 ただし健康保険組合では取り扱いが異なることがあるため、加入先の保険者に確認してください。
扶養に入り続けたいので、失業手当を受け取らないことはできますか?
できます。失業手当の受給は義務ではなく、申請するかどうかは本人の選択です。 ただし受給できる期間は原則として離職日の翌日から1年間で、過ぎた分は受け取れなくなります。 病気・出産・育児などですぐに働けない場合は、受給期間を延長する制度があり、 延長中は失業手当を受け取っていないため、収入要件を満たせば扶養に入ることができます。 詳しくは「失業手当の受給期間は1年で失効|延長申請の条件・期限・必要書類」をご確認ください。 いずれの場合も、扶養に入れるかどうかの最終判断は加入先の保険者に確認してください。
「106万円の壁」とは違う話ですか?
別の話です。いわゆる106万円の壁は、自分がパート先で健康保険・厚生年金に加入する(社会保険の適用を受ける)かどうかの話で、 働いている間の勤務先の規模や労働時間などで決まります。 この記事の130万円(日額3,612円)は、家族の健康保険の被扶養者でいられるかという別の判定です。 退職して失業手当を受け取る場面で関係するのは後者です。
扶養に入っていると、失業手当が減額されたりもらえなくなったりしますか?
されません。失業手当の受給資格と金額は、雇用保険の加入期間・退職理由・退職前の賃金で決まり、 扶養に入っているかどうかは影響しません。影響は逆方向だけ—— つまり失業手当の日額が扶養の判定に影響するのであって、扶養が失業手当に影響することはありません。 扶養内で働いていた方の受給資格については 「パート・アルバイトでも失業手当はもらえる?」で解説しています。
受給が始まったら、必ず届け出てください
日額3,612円以上で基本手当の支給が始まったのに扶養から外れる届出をしないままでいると、 さかのぼって被扶養者の資格が取り消され、 その間に健康保険で受けた医療費(保険負担分)の返還を求められることがあります。 受給の事実を保険者に隠したり、扶養から外れる届出を意図的に遅らせたりすることは絶対に避けてください。 支給が始まったら、家族の勤務先を通じて速やかに「被扶養者(異動)届(非該当)」を提出してください。
また、失業手当そのものについても、働いた事実や収入を申告しないなどの不正があった場合、 雇用保険法34条1項により原則としてその日以後は基本手当が支給されなくなります (やむを得ない理由があると認められる場合を除きます)。 加えて、受け取った額の返還と、その2倍以下の額の納付を命じられることがあり、 悪質な場合は刑事責任を問われるおそれもあります。 迷ったら自己判断せず、扶養のことは保険者に、失業手当のことはハローワークに確認してください。
まとめ
- 扶養に入ったまま失業手当を受け取れるかは基本手当日額で決まります。3,611円以下なら入ったまま、3,612円以上なら外れます
- 3,612円の出所は年収基準130万円÷360日。60歳以上・障害のある方は180万円(日額5,000円未満が目安)、2025年10月からは19〜22歳(配偶者を除く)が150万円(日額4,166円以下が目安)です
- 失業手当は非課税ですが、健康保険の扶養判定では収入に数えます
- 退職前の月給がおよそ13万5,000円以上なら日額3,612円以上になる計算です。時給制の方は最低保障で日額が上がることがあります
- 外れるのは支給が始まってから終わるまでの間だけ。待期・給付制限中は入れて、受給が終われば戻れます
- 外れたら14日以内に国民健康保険と国民年金(第1号)の手続きを。保険料を払っても、通常は手当の総額のほうが大きく残ります
- 健康保険組合は基準が異なることがあります。扶養の判定は保険者に、失業手当の手続きはハローワークに確認してください
主な参照元(一次情報)
- 日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」(収入要件130万円・150万円・180万円/日額3,611円以下/待期期間中の認定と3,612円以上の支給開始による削除届/年間収入は今後の見込み額)
- 日本年金機構「健康保険被扶養者(異動)届」説明(PDF)(失業等給付・公的年金・傷病手当金等も収入に含む/届出は事実発生から5日以内/離職票・受給資格者証など収入確認の添付書類)
- 「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号)(130万円・180万円の基準/同居は被保険者の年間収入の2分の1未満・別居は仕送り額未満)
- 日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」(2025年10月1日から150万円未満・被保険者の配偶者を除く)
- 厚生労働省「給付制限期間が2か月から1か月に短縮されます」(PDF)(2025年4月1日以降の離職に係る給付制限原則1か月)
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります〜令和8年8月1日から〜」(PDF・LL080731保01)(賃金日額・基本手当日額の上限下限と給付率の区分)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度の保険料月額17,920円)
※制度は改正されることがあります。最新の取り扱いは上記の公的情報および加入先の保険者・管轄のハローワークでご確認ください。
あわせて読みたい
最終更新日:2026年8月15日
※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の受給可否は管轄のハローワークなど関係機関の判断によります。