退職後の国民年金は14日以内に切り替え
失業特例免除は申請しないと始まらない
会社を辞めると厚生年金の資格がなくなり、退職日の翌日から14日以内に市区町村で国民年金(第1号被保険者)への切り替えを届け出ます。 令和8年度の保険料は月17,920円です。 失業した方には、本人の前年所得を問わずに審査する「失業等による特例免除」があり、失業した月の前月から翌々年6月分まで申請できます。 ただし免除は申請しないと始まらず、免除した期間は将来の年金額が下がります。 この記事では、切り替えの手続き・特例免除の根拠と期間・免除の代償と追納を、条文と令和8年度の実額で解説します。
この記事の内容
結論:切り替えは14日以内・免除は自動ではかからない
退職後の国民年金で決まっていることは2つです。 ひとつは期限。厚生年金の資格を失った日(退職日の翌日)から14日以内に、住所地の市区町村へ種別変更の届出をします(国民年金法12条1項・同法施行規則6条の2)。 もうひとつは免除は申請制だということ。失業したからといって保険料が自動で免除されることはなく、申請して承認されてはじめて免除になります(全額免除は国民年金法90条1項、一部免除は同法90条の2。いずれも「申請があつたときは」)。
退職後の公的な手続きは、健康保険(任意継続・国保・扶養)→年金→住民税・所得税の順に期限が来ます。 健康保険の選び方は「任意継続と国保はどっちが安い?退職後の軽減は離職理由コードで決まる」、 全体の順番は「退職前にやっておくことチェックリスト|失業手当・傷病手当金で損をしないための準備」にまとめています。 この記事は年金の部分だけを扱います。
国民年金への切り替え手続き — 窓口・持ち物・配偶者の分も同時に
日本国内に住む20歳以上60歳未満の方で厚生年金に加入していない方は、全員が国民年金の第1号被保険者か第3号被保険者になります。 退職して次の勤務先の厚生年金にすぐ入らない場合は、第1号被保険者として自分で保険料を納めます。
| 内容 | |
|---|---|
| いつまでに | 退職日の翌日から14日以内(日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」提出期限欄。根拠は国民年金法施行規則6条の2「当該事実があつた日から十四日以内」) |
| どこで | 住所地の市区役所・町村役場の国民年金窓口。電子申請も可能 |
| 提出するもの | 国民年金被保険者関係届書(申出書) |
| 持ち物 | 基礎年金番号通知書または年金手帳(基礎年金番号で手続きする場合)、もしくはマイナンバーカード。退職直後の手続きでは、厚生年金の資格喪失日を証明できるもの(離職票等)が必要になる場合があります |
| 誰が | 本人または世帯主 |
出典:日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」(2025年9月11日更新)・「会社を退職したときの国民年金の手続き」。離職票が届く前でも、健康保険資格喪失証明書など資格喪失日がわかる書類で手続きできるかは窓口にご確認ください。
資格取得日は「退職日の翌日」。退職日によって国民年金になる最初の月が決まる
国民年金第1号被保険者としての資格取得日は、厚生年金の資格を失った日=退職日の翌日です。 日本年金機構は、月末退職なら翌月1日から、月中退職なら退職日の翌日から第1号被保険者の資格を取得すると案内しています。 種別に変更があった月は変更後の種別の月として扱われるため(国民年金法11条の2)、たとえば8月31日退職なら8月分までは厚生年金の対象で9月分から国民年金、8月15日退職なら8月分から国民年金になります。 どちらになるかは退職日で自動的に決まるもので、手続きの時期で変わるものではありません。
あなたが厚生年金に加入していた間、配偶者が扶養される立場(国民年金第3号被保険者)だった場合、 あなたの退職と同時に配偶者も第3号被保険者の資格を失い、第1号被保険者への切り替え手続きが必要になります(国民年金法7条1項3号・日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」)。 切り替え後は配偶者の分にも月17,920円の保険料がかかります。配偶者の分の届出も14日以内・市区町村で、特例免除の申請も本人と同じように可能です。 ここを忘れると、配偶者の分だけ未納期間が生じます。
逆に、あなたが配偶者(会社員・公務員)の扶養に入れる場合は、あなたが第3号被保険者となり保険料の負担はありません。 手続きは配偶者の勤務先経由です。ただし基本手当日額が3,612円以上で、実際に基本手当の支給対象期間に入ると、健康保険・年金の扶養から外れる扱いが一般的で、受給中は第1号として自分で保険料を納めることになります(待期・給付制限の間は外れません)。 この時系列は「失業手当をもらうと扶養から外れる?日額3,612円の壁と「外れるのは受給中だけ」の時系列」で解説しています。
14日を過ぎてしまったら
14日を過ぎても届出ができなくなるわけではありません。届出が遅れると日本年金機構から「届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)」が届くことがあり、 届出をすれば資格取得日(退職日の翌日)にさかのぼって第1号被保険者となり、その月分からの保険料の納付書が届きます。 遅れた分の保険料が消えるわけではないので、気づいた時点で市区町村へ届け出てください。
失業等による特例免除 — 前年所得を問わない根拠と、申請できる期間
国民年金の免除は、本来は本人・世帯主・配偶者の前年所得が基準以下であることが条件です(国民年金法90条1項1号)。 退職直後は前年に給与があるため、通常の基準では免除にならないことが多くなります。 そこで用意されているのが失業等による特例免除です。
- 国民年金法90条1項4号:「保険料を納付することが著しく困難である場合として天災その他の厚生労働省令で定める事由があるとき」に免除を申請できる
- 国民年金法施行規則77条の7第2号:その事由として、免除を受けようとする期間の属する年またはその前年(1月から6月までの月分については前々年まで)において「失業等により保険料を納付することが困難と認められるとき」を定めている
- 日本年金機構はこれを「失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例」と案内している(2026年8月3日更新)
外れるのは「本人の前年所得」だけ。世帯主・配偶者の所得審査は残る
ここは解説記事で省かれやすいところです。特例で審査から外れるのは失業した本人の前年所得です。 日本年金機構は「世帯主や配偶者がいる方は、世帯主や配偶者が所得要件を満たしているか、失業等の特例に該当している必要があります」と明記しています。 配偶者に一定以上の所得がある方、親(世帯主)と同居している方は、本人が失業していても全額免除にならない、あるいは一部免除にとどまることがあります。 免除は全額・4分の3・半額・4分の1の4段階で、どの段階になるかは審査で決まります。
申請できる期間:失業した月の前月から翌々年6月分まで
免除の「年度」は7月から翌年6月までで、申請書は年度ごとに1枚必要です。 施行規則77条の7が「期間の属する年またはその前年」の失業を対象にしているため、 失業した年の年度分と、その翌年度分を申請できます。日本年金機構の案内では「失業等の前月〜翌々年6月」です。通常は2年度分にまたがりますが、12月31日離職のように失業日が翌年1月1日になる場合は最大3年度分の申請書が必要になります。
| 例 | 免除を申請できる期間 | 申請書 |
|---|---|---|
| 例1 | 2026年8月31日退職(失業日=9月1日) 2026年8月分〜2028年6月分(令和8年度分=2026年7月〜2027年6月、令和9年度分=2027年7月〜2028年6月のうち、失業の前月以降) | 2枚(年度ごと)。令和9年度分は2027年7月以降に申請 |
| 例2 | 2026年12月31日退職(失業日=2027年1月1日) 2026年12月分〜2029年6月分(失業の事由が発生した年は2027年扱い) | 最大3枚(令和8・9・10年度分) |
※日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」(2026年8月3日更新)の表をもとに当サイトが整理。「失業した日は離職日の翌日」「12月31日に離職したときは翌年が失業等の事由が発生した年となる」と明記されています。※さかのぼれるのは申請時点から2年1か月前の月分までです(納付期限から2年で時効)。
必要書類:離職票または受給資格者証のコピー
雇用保険の被保険者だった方は、雇用保険被保険者離職票のコピー、またはハローワークが交付する雇用保険受給資格者証・雇用保険受給資格通知のコピーのいずれかを申請書に添えます。 離職票が届いていない段階でも受給資格者証があれば足り、逆に失業手当の手続き前でも離職票があれば申請できます。 同じ失業について過去に書類を添付して申請していれば、2年度目の申請で再度添付する必要はありません。 申請先は市区町村の国民年金窓口または年金事務所で、郵送・電子申請もできます。 離職票が届かない場合の取り寄せ方は「離職票が届かないときは?会社の期限「退職日の翌日から11日目」と自分で取り寄せる2つの方法」をご覧ください。
免除の審査で見るのは前年の所得で、失業手当(基本手当)は雇用保険法12条により租税その他の公課を課されない=所得税法上の所得に入りません。 したがって、失業手当を受給中であることや、その金額の大小が免除の可否に影響することはありません。 税金の側の扱いは「失業保険は確定申告が必要?非課税の根拠と、退職した年に所得税が戻る人の条件」で解説しています。 なお、健康保険の扶養の判定では失業手当を収入に数えるので、年金の免除審査とは別の話です。
免除の代償:将来の年金額はどれだけ下がるか(令和8年度の実額で計算)
免除は「払わなくてよくなる」制度ではなく、その期間の保険料を国庫負担分だけで計算する制度です。 国民年金法27条は、老齢基礎年金の額を計算するとき、全額免除期間は2分の1、4分の3免除期間は8分の5、半額免除期間は8分の6、4分の1免除期間は8分の7の月数として数えると定めています(平成21年4月以降の期間。日本年金機構も同じ割合を案内)。 一方、未納の期間は年金額にまったく反映されず、受給資格期間(10年)にも入りません。
1年間免除すると、老齢基礎年金は年いくら変わるか
令和8年度の老齢基礎年金の満額は年847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの方・40年=480か月納付)です。 1か月分の価値は847,300円÷480か月=約1,765円で、12か月納めると年額で約21,183円の年金になります。 これをもとに、12か月分を免除した場合に将来の年金額(年額)がどうなるかを計算すると次のとおりです。
| 免除の区分 | 納める額(月) | 反映率 | 12か月分の年金額(年額) | 全額納付との差(年額) |
|---|---|---|---|---|
| 全額納付 | 17,920円 | 1 | 約21,183円 | ― |
| 4分の1免除 | 13,440円 | 8分の7 | 約18,535円 | 約2,648円 |
| 半額免除 | 8,960円 | 8分の6 | 約15,887円 | 約5,296円 |
| 4分の3免除 | 4,480円 | 8分の5 | 約13,239円 | 約7,944円 |
| 全額免除 | 0円 | 2分の1 | 約10,591円 | 約10,591円 |
| 未納 | (納めない) | 0 | 0円 | 約21,183円 |
※「納める額」は令和8年度の月額。12か月分の納付額は全額納付215,040円・4分の1免除161,280円・半額免除107,520円・4分の3免除53,760円。当サイトが令和8年度の満額847,300円と日本年金機構公表の免除後保険料額(4分の3免除4,480円・半額免除8,960円・4分の1免除13,440円)から計算した参考値です。年金額は毎年度改定されるため、実際に受け取る額は受給時の改定率によります。日本年金機構も「1年間分追納すると、全額免除の期間であれば老後の年金が年間で約1万円増えます」と案内しており、上の表の全額免除の差額と整合します。 ※一部免除(4分の3・半額・4分の1)は、減額された保険料を納めていることが条件です。減額後の保険料を納めないと、その期間は未納と同じ扱いになります。
たとえば退職後12か月間を全額免除で過ごした場合、将来の老齢基礎年金は年約10,591円少なくなります。 65歳から20年受け取れば約21万円、25年なら約26万円の差です。 ただし同じ12か月を未納にすると年約21,183円の差になるうえ、受給資格期間にも数えられません。 免除は「年金が半分になる」のではなく「未納にするより半分残る」制度だと理解してください。 納められる方は納付、難しい方は免除を申請し、未納のまま放置しないことが、年金の側で言えるすべてです。
追納で取り戻せる期間は10年・3年度目から加算
免除した期間の保険料は、あとから納めて年金額を満額に近づけることができます(追納・国民年金法94条)。
- 追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除期間(法94条1項)
- 免除を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされる(法94条3項)。令和8年度中に令和6年度・令和7年度の月分を追納する場合は加算なし(令和7年度の月分=月17,510円)
- 一部免除の期間は、減額後の保険料を納付済みでないと追納できない(法94条1項ただし書)
- 追納は原則として古い月分から順に行う(法94条2項)
- 追納した保険料は社会保険料控除の対象(所得税・住民税)
- 申込先は年金事務所(市区町村の窓口では受け付けていない)。納付書での納付のみで、口座振替・クレジットカードは使えない
再就職して収入が戻ったあとに、免除した期間の分を追納するのが一般的な使い方です。 加算が始まるまでの2年度のうちに追納すれば当時の額のままなので、免除の承認通知は捨てずに保管し、追納できる期限(10年)を控えておいてください。
よくある勘違いQ&A
失業手当をもらっている間は、年金の免除は受けられないのですか?
申請できます。免除の審査は前年の所得で行い、失業手当は非課税(雇用保険法12条)で所得に入りません。承認の可否と区分は日本年金機構の審査で決まります。 失業等による特例免除は、失業の事実を離職票や受給資格者証で確認できれば本人の前年所得を問わずに審査されます(§3)。 ただし世帯主・配偶者の所得審査は残るため、家族の所得によっては一部免除にとどまることがあります。
自己都合退職だと、特例免除の対象外ですか?
離職理由による区別はありません。施行規則77条の7は「失業等により保険料を納付することが困難と認められるとき」と定めており、日本年金機構の案内も離職理由を条件にしていません。 国民健康保険の軽減は離職理由コードで対象が決まりますが(「任意継続と国保はどっちが安い?退職後の軽減は離職理由コードで決まる」)、年金の特例免除は別の仕組みです。 自己都合退職の方も、離職票または受給資格者証のコピーを添えて申請できます。
すぐ再就職する予定です。1か月だけの無職期間でも切り替えが必要ですか?
必要です。日本国内に住む20歳以上60歳未満の方は、厚生年金に加入していない期間は必ず国民年金の第1号か第3号のどちらかになります。 退職日と入社日の間に月末をまたぐと、その月分は国民年金の保険料がかかります(§2)。再就職先で厚生年金に入れば、その月から自動的に第2号に戻ります。
免除を申請すれば、払わなくても年金は満額もらえますよね?
納付猶予と免除は何が違うのですか?
年金額に反映されるかどうかが違います。納付猶予(20歳以上50歳未満・本人と配偶者の所得で審査)は、受給資格期間には数えられますが年金額には反映されません。 免除は区分に応じて2分の1〜8分の7が反映されます。どちらも10年以内の追納は可能です。 失業等の特例は免除・納付猶予のどちらの申請にも使えます。どちらで承認されるかは審査によるので、承認通知で区分を確認してください。
まとめ
- 退職したら退職日の翌日から14日以内に市区町村で国民年金第1号被保険者への種別変更を届け出る(国民年金法12条1項・施行規則6条の2)。第3号だった配偶者の切り替えも同時に発生する
- 令和8年度の保険料は月17,920円。資格取得日は退職日の翌日で、国民年金になる最初の月は退職日によって決まる(手続き時に確認)
- 失業等による特例免除は国民年金法90条1項4号→施行規則77条の7第2号が根拠。本人の前年所得を問わず審査されるが、世帯主・配偶者の所得審査は残る
- 申請できるのは失業した月の前月から翌々年6月分まで(通常2年度分・年初の失業なら3年度分)。年度(7月〜翌6月)ごとに申請書1枚、必要書類は離職票または受給資格者証・受給資格通知のコピー
- 失業手当は非課税で前年所得に入らないため、受給中でも免除の審査に影響しない。離職理由による区別もない
- 免除は申請しないと始まらず、免除した期間は年金額が下がる。全額免除12か月で年約10,591円の差(2分の1反映)。未納なら年約21,183円の差で、受給資格期間にも入らない
- 追納は10年以内、免除を受けた年度の翌年度から3年度目以降は加算あり。一部免除は減額後の保険料を納めていないと追納できない
主な参照元(一次情報)
- 国民年金法(e-Gov法令検索)(第7条 被保険者の資格/第11条の2 種別変更があった月の扱い/第12条 届出/第27条 年金額(免除期間の反映割合)/第90条 申請全額免除/第90条の2 一部免除/第94条 保険料の追納)
- 国民年金法施行規則(e-Gov法令検索)(第6条の2 種別変更の届出は14日以内/第77条 免除申請の年度は7月〜翌6月/第77条の7第2号 失業等により納付が困難と認められるとき)
- 雇用保険法(e-Gov法令検索)(第12条 公課の禁止)
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」(提出期限=退職日の翌日から14日以内・持ち物)
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(月末退職・月中退職の資格取得日/被扶養配偶者の第3号資格喪失)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度 月額17,920円)
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(失業等による特例免除・必要書類・免除区分ごとの反映割合・免除後の保険料額)
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」(年度=7月〜翌6月・特例免除の申請可能期間の表)
- 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(10年以内・3年度目以降の加算・令和8年度中の追納額)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金満額 月70,608円=年847,300円)
※制度は改正されることがあります。免除の可否・区分は日本年金機構の審査によります。本記事の年金額の差は、記載した公的資料の数値から当サイトが計算した参考値です。手続きは住所地の市区町村の国民年金窓口または年金事務所にご確認ください。
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最終更新日:2026年8月23日
※本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な解説です。個別の受給可否は管轄のハローワークなど関係機関の判断によります。国民年金の免除の可否・区分は日本年金機構の審査によります。